前後逆の車椅子の模式図(ちょっとわかりにくい?)。後輪が自在に動くが、前輪の向きは固定。そして、後輪の方が小さい。
病院へ行く
出産病棟までたどり着いて受付の人に「4時から陣痛が始まっていて、今の間隔は4分おきで・・・」と説明したが、それよりも陣痛の様子を見て彼女たちはちょっと慌てた様子。

「あそこの分娩室が空いていたから、そこへ連れていって!」

とスタッフ同士で言ってそのうちの一人が分娩室に連れていってくれる。そこで車椅子からベッドに移されて助産婦がやってくる(日本のような分娩台ではなく、普通のベッドで分娩するのであった)。

内診で子宮口の大きさを測って、分娩の進み具合をみた後、壁から出て来ているホースの先を持たされ、ここから出てくるガスを吸うようにと言われる。そのガス、笑気ガスで、要するに吸入麻酔。もともと今回は無痛分娩もいいかな、と思っていたので

「硬膜外(麻酔)を希望しているんですが・・・」というと

「今はもうそんなどころじゃないです、この期に及んではこれしか痛みを取る方法はありません」

と言われてしまった。

そして・・・・・・破水ののち、無事出産(午前9時)。病院到着から一時間半ほど、とても早かった。分娩中は、異常がない限りは助産婦のみで出産まで終わらせるようで(見学実習の女子医学生はいたが)、医師は産後に「Congratulations!」と言うため(だけ?)にやってくるくらい(実際には、会陰縫合の必要があるかないかも診てくれはしたが)。

その後、へその緒を切り、赤ちゃんの身長、体重などを測り、カンガルーケア、そしていきなりおっぱいを口に含ませる。そしてネームタグを両足に一つずつ巻いてくれる。あと、ビタミンK2の注射もこの時に。後産で早く胎盤が出てくるように、と子宮収縮促進薬を左大腿部に筋肉注射(注射の前に説明があって、してもいいか、と承諾を求められる)。

一通りのことが終わった後、みんなが出て行って赤ちゃんと一緒にボーとする。
11時頃に、先ほどの助産師がやって来て赤ちゃんに抗生物質の注射をするということで赤ちゃんは新生児治療室に。その間に

「シャワーを浴びて」

とシャワールームに歩いていかされる。しかし、この時足取りはふらふらで、普通にシャワーを浴びなさいと言われてもかなり厳しい。
 ちなみに、今回使った分娩室は、廊下から扉を開けて入ると、まず通路があってから四畳半ほどの大きさの部屋があり、真ん中にベッド、その他床頭台、テレビがある。ベッドの頭側の壁からは酸素、窒素、笑気ガスなどの配管。そして壁の向こうがバスとトイレ。で、このバスが普通の浴槽ではなく、畳2畳分くらいの大きさで深さも深い。なんで?と思ったら、どうやら水中出産に使うのらしい。更に、バスルームと反対側にもう一部屋あって、多分これは控え室。テレビなんかが置かれていた。もしかしたらちょっとしたVIP用の分娩室だったのかも。
「救急車は呼んでもすぐに来るわけではない」と聞いていたので有料でも確実な方法を、とタクシーを呼ぶ。電話して15分ほどしたらやって来た。車内でも陣痛がやって来て呻いていると、運転手はちょっとうろたえた様子で

「この車の中では産まないでくれよ」

という。途中工事渋滞があったが15分ほどで病院着(午前7時半頃)。二人目の妊娠だったためか、分娩の進みが早く、到着したときにはすでにかなり迫った状態になっていた。料金を支払うと運転手が

「Good Luck!」

と言ってくれた。
 病院の玄関で立ったまま歩けなくなりどうしたものか、近くに車椅子はないか、と視線をあちこちに向けると「大丈夫?」と声をかけてくれる人もいたし、誰かが車椅子を持ってきてくれた。その時、多分自転車で出勤してきたばかりの病院の職員とおぼしき人が

「陣痛?どこへ行ったらよいのかわからないんでしょ?私が連れていってあげるから付いてきなさい」

と言ってくれた。「後ろ向きにした方が良い」というようなことを言っている。車椅子を前向きに押していこうとしても、なかなかまっすぐ進まない。普通、車椅子は、前の車輪が向きを変えられて後の車輪は前後にしか動かないようになっている(普通の自動車でもそうだが、前輪は操舵輪になっているが後輪は角度が変わらない、そうでなければカーブを曲がるのも大変になる)。しかしこの車椅子、それとは逆になっている。なので、後から押すと非常に進みにくい。どうしてこんな車椅子を考えたのだか、よく分からない。
分娩室に入る
予定日より二週間ほど早く(奇しくも、二度目の助産師の診察を予約していた日)、午前4時頃に陣痛で目が覚める。次第に間隔も短くなり、午前6時半に病院に電話する。午前9時から午後5時まではこの番号、それ以外の時間帯はこっちの番号、と前回の助産師の診察の時に教えられていたのでそこへ掛ける。

「4時から陣痛が始まっていて、今は4分おきにやって来ています、どうしたらよいですか」ときくと、

「あと一時間様子を見て、陣痛が治まっていなければその時はこちらへ来てください」

という返事。こっちは陣痛で苦しんでいるのに1時間待てだなんて・・・と思いつつも待ってみる。その間に病院へ行く準備を整える。
陣痛(妊娠37週)